植物が元気に育つためには土からこだわる必要があるように、髪の毛も土台となる頭皮環境から整えていくことが大切です。薄毛を治すために頭皮環境の改善に励む方も多いでしょう。今回は頭皮環境を改善する方法、そして頭皮環境が薄毛にどのような影響を与えるのかについてご紹介します。
頭皮の働きと構造
頭皮は基本的にお肌と同じ構造をしています。上から角層、顆粒層、有棘層、基底層という順番です。日々新しい皮膚が作られており、約4~6週間のサイクル で皮膚が生まれ変わっています。
皮膚の構造は顔や腕といった肌と同じではありますが、頭皮を取り巻く環境は独特であると言えるでしょう。なぜなら1cm2あたり約150本もの髪の毛が生えており、しかも皮脂や汗の分泌量も他の部位と比べると多いからです。
一般に皮脂分泌が多いと言われているおでこや鼻といったいわゆるTゾーンと比べても、約2~3倍もの皮脂が頭皮から分泌されています。この頭皮から分泌される皮脂は、頭皮や髪の毛を乾燥から守る働きをしています。
つまり頭皮は、髪の毛を支える土台、そして髪の毛を守る働きをしていることが特徴です。
頭皮環境の乱れを放っておくと起こること
頭皮は皮脂や汗の分泌量が多いことから、環境が乱れやすい状況にあります。荒れた頭皮をそのままにしておくと、さまざまなトラブルが起きてしまうこともあるでしょう。
フケやかゆみ
フケやかゆみはちょっとしたことで起きやすいものです。頭皮が紫外線やカラーリングなどのダメージを受けたり、菌が繁殖したりするとなります。髪の毛にフケがついていると、衛生的によく見られないことも少なくありません。
抜け毛の増加
頭皮は髪の毛の土台となる大事な部分です。頭皮を掻きむしる生活を続けていると、爪で髪の毛を傷つけたり引っ掻いたりして抜け毛が増えてしまう原因となります。頭皮環境の荒れが直接、抜け毛を増やすわけではありません。しかし湿疹がひどくなったり、搔き壊しやニキビが増えると、結果的に抜け毛を増やしてしまうことは十分に考えられるでしょう。
髪のボリュームがダウン
皮脂や汗を十分に落としきれていないままだと、髪の毛がベタついてしまいます。とくに皮脂がべったりとついた髪の毛は、ボリュームを少なく見せてしまうので要注意。ふんわりした髪の毛とぺちゃんこの髪の毛では見た目のボリュームが大きく変わります。
頭皮環境が荒れる原因
ではなぜ、頭皮環境が荒れてしまうのでしょうか。代表的な原因を見ていきましょう。
洗いすぎ
乾燥したお肌があかぎれや湿疹の原因となるように、頭皮も乾燥するとさまざまなトラブルを起こしてしまいます。頭皮が乾燥する原因となりやすいのが、洗いすぎです。汚れや皮脂を落とそうとしっかり洗いたくなる気持ちもわかりますが、洗いすぎが原因でフケやかゆみが出ていることが意外と多いものです。洗浄力の強いシャンプーを使ったり、一日に何度も洗う生活を続けたりすると頭皮は乾燥しやすくなってしまいます。頭皮が乾燥することでバリア機能が落ちることもトラブルの原因です。
汚れを落としきれていない
逆に頭皮に汚れが残ったままにしておくのもよくありません。汚れをエサとするマラセチア菌が繁殖する原因になります。マラセチア菌はフケやかゆみを起こすものです。頭皮が赤くなりガサガサになってしまうこともあります。
合わないシャンプーを使っている
人によってはシャンプーの成分が頭皮に合わず、トラブルを起こしているケースもあります。合わないシャンプーを使い続けるとどんなにしっかり洗ってもかゆみが起きてしまうものです。
頭皮環境を改善する方法
頭皮は髪の毛を支える大切な土台です。そのため頭皮の健康が髪の毛の健康に直接つながっているとも言えます。ではどうすれば頭皮環境を改善できるのでしょうか。
シャンプーのすすぎ残しに注意する
きちんとすすいだつもりでも、シャンプーは意外と残っています。たとえば耳の裏側や生え際のあたりはシャンプーが残りやすい部分です。シャンプーのぬめりが完全になくなるまで、しっかりとすすぎましょう。すすぐときは爪を立てないように注意してください。
フケやかゆみがあるときは抗真菌薬を配合したシャンプーも検討
フケやかゆみを改善しようとゴシゴシ洗っても、なかなか良くなりません。症状がしばらく経っても続くようなら、抗真菌剤を配合したシャンプーを使ってみるというのも一つの方法です。市販ではミコナゾールという成分を配合したシャンプーが売られています。
フケやかゆみは脂漏性皮膚炎が原因の場合があります。脂漏性皮膚炎は真菌の仲間であるマラセチア菌が原因となりやすいので、抗真菌剤を配合したシャンプーを使うと症状が改善される場合があります。
頭皮環境と薄毛の関係性
ところで頭皮環境が荒れると薄毛になりやすい、という話は本当なのでしょうか。薄毛を改善するために頭皮ケアを始める方も多くいます。
頭皮環境が荒れると健康な髪が育ちにくくなる
頭皮環境と薄毛は直接の関係はありません。それでも頭皮環境がかなり悪化すると発毛に悪影響を与えうるでしょう。頭皮環境が悪化し、湿疹になると脱毛が起こり得ます。また毛穴がつまりニキビやおできができると、一時的な脱毛症が起こりうることも知られています。毛穴が詰まる=薄毛になるというわけではないのですが、髪の毛の健康を考えると決して良いものではありません。
薄毛の原因は頭皮環境以外の要因がほとんど
時々「毛穴が詰まっているから薄毛になったのかもしれない」と言って頭皮環境の改善を始める方も見かけます。
しかし明らかに髪の毛が細くなったり本数が少なくなったりしている場合は、頭皮環境とはまた違ったものが原因の可能性が高いです。頭皮環境はあくまで「健康な髪の毛を育ちやすくする土台」というだけで、髪の毛の発育へダイレクトに影響するものではありません。
薄毛の原因は頭皮環境よりもAGAの関与が大きい
髪の毛の太さや長さが以前と比べてなくなった、抜け毛が増えて頭皮が目立つようになってきた。もしこのようなことがすでに起きているのならAGA(男性型脱毛症)の可能性が高いでしょう。男性が薄毛になる原因の8割はこのAGAだと言われています。
つまり薄毛が気になってきたからといって頭皮環境の改善をしたとしても、AGAの治療を行っていなければ薄毛は改善しないということです。
薄毛が気になったら頭皮環境のケアと一緒に治療も始めよう
AGAはジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンが原因で起こります。ジヒドロテストステロンが髪の毛の成長を阻害することで、細くて短い髪の毛が増えてしまうのです。いくら頭皮環境を整えてもジヒドロテストステロンの働きを抑えることはできません。そのため薄毛が気になってきた場合は、AGAの治療を始めることが大切です。
たとえばジヒドロテストステロンが作られるのを阻害するフィナステリド(プロペシア)やデュタステリド(ザガーロ)が治療薬としてよく使われています。その他、作用機序は異なるのですが、毛髪を成長させる薬としてミノキシジル外用薬も有名です。しっかりとしたAGAの治療を始めることで薄毛の進行を食い止め、ボリュームを増やすことが可能です。
まとめ
頭皮は髪の毛を支える大切な土台です。フケやかゆみがあったり、皮脂が毛穴に詰まったりすると髪の毛の成長に影響が出てしまうことも考えられます。そのため汚れをしっかり落とし、シャンプー後はすすぎ残しがないように注意することが大切です。
またフケやかゆみがひどい場合は抗真菌剤を配合したシャンプーを使うと良くなるでしょう。しかし頭皮環境の悪化が薄毛に直接関係していると聞かれたらそうではありません。明らかに薄毛が進行している場合はAGAが原因だと考えられますので、きちんとした治療を始めましょう。