髪の毛を成長させる因子、「IGF-1」をご存知でしょうか。
体にあるさまざまな組織を成長させる働きがあることから、IGF-1の働きを活かして育毛する方法も知られています。
しかし本当にIGF-1で髪の毛は生えてくるのでしょうか。
今回はIGF-1の働きと育毛の関係について詳しく解説していきます。
IGF-1って何?どのような働きを持つのか
IGF-1は「insulin-like growth factor-1」を略したものです。
日本語では「インスリン様成長因子-1」、別名「ソマトメジンC」とも呼ばれています。
成長ホルモンの働きによって肝臓や骨格筋などで産生される物質です。
インスリンといえば血糖値を下げる働きがある物質として有名ですが、IGF-1は“インスリン様物質”なのでインスリンそのものではないものの、インスリンととても近い形をしていることが特徴となります。
IGF-1にはいくつかの働きがあるので、それぞれを見てみましょう。
肌を活性化 する
IGF-1は美容面でも非常に注目されている成分です。
肌の再生に関わることから、エイジングケアに使えないかと研究が進められています。
ある研究では、IGF-1によって表皮幹細胞を活性化させることに成功しました。
表皮幹細胞とは、新しい皮膚を作る元となる細胞のことです。
表皮幹細胞が新しい細胞を作ることで、肌が若々しく保たれます。
また表皮幹細胞はヒアルロン酸を生み出す力を持っていることから、肌に潤いを与える働きがあることも知られているのです。
参考:成長因子「IGF-1」が、表皮幹細胞を活性化させることを確認
筋肉を成長 させる
筋力の発達に関係していると言われていることから、筋トレをしている方がIGF-1をサプリメントで摂取しているケースもあります。
IGF-1は成長因子として働くため、筋肥大にも関係しているのです。
ある実験では、ラットの筋肉にIGF-1を注射したところ、部分的な筋肥大が見られたことが明らかになっています。
骨を強化 する
IGF-1は骨を作る働きをしている骨芽細胞を増殖させます。
骨を作る工場が増えるので、骨の形成が促進されるのです。
筋肉を発達させる効果もあることから、IGF-1は体を丈夫にするためにも役立つ成分であると言えるでしょう。
参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscpt1970/27/1/27_1_385/_pdf
コラーゲンの生成を促す
IGF-1がコラーゲンを合成する力を増加させることも研究で明らかです。
コラーゲンは肌の弾力や潤いを守る他、髪の毛を健康に保つ働きもあります。
参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/34/7/34_7_548/_pdf/-char/ja
IGF-1がなぜ育毛に良いのか?メカニズムを解説
ここまで一般的に知られているIGF-1の働きを説明しました。
「育毛に関する働きはないの?」と思いの方もいるでしょう。
冒頭でも少し触れた通り、IGF-1は育毛に関する働きも明らかになっていますので、ここからはIGF-1が育毛にどう働いていくのか、メカニズムを解説していきます。
頭皮の炎症を抑える
IGF-1には抗炎症作用があります。
IGF-1が血管内皮細胞にある受容体に結合することで、抗炎症作用を発揮するのです。
炎症は健康な髪の毛を育てる上では、妨げにしかなりません。
頭皮に炎症が起こると、掻きむしったりかさぶたができたりすることで、毛髪の成長が妨げられてしまいます。
掻くときに髪の毛を痛めてしまうこともあるでしょう。
抗炎症作用があることで、頭皮を健康に保ってくれます。
血行を良くする
育毛には頭皮マッサージをしたが良い、と言われることがあるように、血液の流れやすさも髪の毛の健康に関係しています。
毛髪の成長に必要な栄養素は血液を使って運ばれるので、血行の良さも大切なのです。
IGF-1が血管内皮細胞に働くと抗炎症作用を発揮すると同時に、血管も拡張します。
血管を拡張させるNO(一酸化窒素)の産生を促す働きがあるためです。
血管が広がると血液がスムーズに循環するため、頭皮の血行が良くなることも期待できます。
血管拡張によって血圧が少し下がる可能性もあるでしょう。
成長期を長くする
IGF-1は成長期の期間を長くすることで、毛髪が成長しやすい環境を整えます。
毛髪は毛周期というサイクルにそって、伸びたり抜けたりを繰り返しており、成長期→退行期→休止期の流れをずっと繰り返しているのです。
成長期は毛髪が太く長く成長する時期、退行期から休止期は毛髪の成長が止まって抜けていく時期となります。
薄毛の方の髪の毛がなぜ少なくなっていくのかというと、成長期の期間が著しく短くなってしまうためです。
毛髪がしっかりと成長してくべき時期をあっという間に通り越して退行期や休止期に入ってしまうので、毛髪がしっかりと成長しきれません。
IGF-1によって成長期が長くなれば、髪の毛が太く長くなるために成長できる期間も長くなるということです。
毛髪の蛋白量を増やす
毛髪の成分のうち、約80%は蛋白質です。
そのため蛋白質量を増やすことは、健康な毛髪を育てることにもつながります。
IGF-1には毛髪の蛋白質量を増やし、質を高めてくれる働きがあるため、健康的な毛髪を作るのに役立つでしょう。
IGF-1を増やす方法 とは?
どうやらIGF-1が毛髪に良いらしいということはわかりました。
しかしIGF-1の量をどうやって増やせばよいのでしょうか。
知覚神経を刺激する
IGF-1は面白いことに、知覚神経を刺激すると分泌が活発になります。
唐辛子に含まれる辛味成分であるカプサイシンを皮膚に塗ると、30分後からIGF-1の濃度が増加し始めることがわかっています。
一度塗布するだけで、3時間はIGF-1の濃度が高いまま保たれることが知られています。
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また皮膚の弾力性を高めたり、血流を増加させたりする効果が知られています。
今後、薄毛治療で効果が示されるかもしれません。
日本酒を飲む
日本酒が肌に良いと聞いたことがないでしょうか。
日本酒配合の化粧水も見かけることがあります。
日本酒をよく飲む方には美肌の方が多いと言われるのは、日本酒によってIGF-1の産生が増加するからなのです。
他に赤ワインやビールもIGF-1を増やすのに良いと言われています。
お酒は適量であれば髪や肌の健康維持に役立つかもしれません。
ミノキシジルの外用
有名なミノキシジル外用薬は、毛包周囲の血流を改善させるだけでなくIGFをはじめとする様々なサイトカインの産生を促進することで髪を増やし太くしていると考えられています。
参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/105/5/105_5_285/_pdf
まとめ
IGF-1は毛髪の成長期を長くしたり、抗炎症作用や血管を拡張したりする働きを持っているため、育毛効果が期待されている成分です。
IGF-1を増やすことで増毛効果が証明されているのはミノキシジル外用薬です。
軽度の薄毛の方は試してみるといいでしょう。
中等度以上の方は、男性ホルモンから毛包を守るフィナステリド、デュタステリドを併用するかHARG療法をトライするといいでしょう。