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プロペシア(フィナステリド)の
副作用について

プロペシア(フィナステリド)の副作用について

プロペシア(フィナステリド)は安全性の高い薬ですが、副作用がまったくないわけではありません。
プロペシアの内服に関して最も重要な問題となるのは性機能への影響で、その影響に関しては現在でも議論の分かれているところです。
日本における治験では、性異常障害の発生率に関しては、プラセボ(偽薬)との統計学的な差はありませんでした。
治験時の副作用で、リビドー減退3例(1.1%)、勃起機能不全2例(0.7%)が見られていますが、偽薬を飲んだ群も同程度の性機能障害が見られており、プロペシアのせいで性機能障害が起こったとは言えないという解釈です。
ただし、これには逆の意見もあり、米国FDAでは、プロペシアの添付文書に薬を中止後も続く性欲の低下、勃起不全、オーガニズムの異常、内服中止後改善する男性不妊、精子の異常について警告して、完全に安心というわけではありません。
今後、子供を作る予定のある方は少し注意したほうがいいでしょう。

またプロペシア内服との因果関係は不明ですが、市販後調査では、プロペシア内服中に0.2%の頻度ですが、肝障害の発症が報告されています。
もともと肝機能障害のある方は注意する方がいいでしょう。
長期でプロペシアを内服される場合は、定期的に採血にて肝機能の検査をすることが勧められます。

プロペシアの副作用の種類と頻度

種類/頻度 頻度不明 1~5%未満 1%未満
過敏症 そう痒症、蕁麻疹、発疹、血管浮腫(口唇、舌、咽喉及び顔面腫脹を含む)
生殖器 睾丸痛、血精液症、男性不妊症・精液の質低下(精子濃度減少、無精子症、精子運動性低下、精子形態異常等) リビドー減退 勃起機能不全、
射精傷害、
精液量減少
肝臓 AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、γ-GTP上昇円
その他 乳房圧痛、乳房肥大、抑うつ症状、めまい

MSD プロペシア錠 添付資料より https://www.msdconnect.jp/static/mcijapan/images/pi_propecia_tab.pdf

フィナステリド(プロペシアなど)やデュタステリド (ザガーロなど)を飲むことで鬱(うつ)病を発症しうるか?

フィナステリド(プロペシアなど)やデュタステリド(ザガーロなど)はAGA治療において代表的な飲み薬となっていますが、それらの薬を飲むことで鬱(うつ)病になりやすくなるのではないかという噂がネット上で流れています。
有名芸能人がAGA治療を行ってうつ病を発症したのではないか、という噂が根拠の様です。
これらは全く根拠がないわけではなく、一部、それを示唆する論文も存在します。

データ

Welk.Bらはフィナステリド(プロペシアなど)やデュタステリド (ザガーロなど)を飲んだ66歳以上の男性で自傷行為や抑うつ状態が優位に増えた、と報告しています。

自傷行為は0.14%→0.18%に増加
抑うつ状態は1.37%→1.95%に増加
という結果です。

ただしこちらは後ろ向き研究であり、かつAGAの患者ではなく前立腺肥大の患者であることに注意が必要です。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28319231

またUnger et alはランダム化比較試験において、前立腺癌の予防のためにフィナステリドを使用していた患者で抑うつ状態が中等度増えたことを示しています。別件ですがフィナステリドによる前立腺癌の予防効果が示されているのと、東夷系的には男性機能には影響を与えないことが示されています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27565902

Babak Rahimi-Ardabili らはAGAの患者128名にフィナステリド1mgを投与したところ、不安や抑うつがわずかに増えたと報告しています。
こちらは比較試験ではありませんが、AGAの患者に対する知見という点では貴重なデータと言えるでしょう。
というのもAGAの患者様は髪の毛が増えることでハッピーになるという精神的な効果があるので、それを差し引いても抑うつ状態が増えるというのことが示されているからです。
https://bmcclinpharma.biomedcentral.com/articles/10.1186/1472-6904-6-7

フィナステリドやデュタステリドが鬱を誘導する理由

フィナステリドやデュタステリドが5α還元酵素を阻害することでAGAを改善、予防するとともに神経ステロイドの産生が抑えられること、フィナステリドやデュタステリドによって抑制されるジヒドロテストステロンがストレスに対する神経内分泌を調整していることが挙げられています。

考察

日本の臨床データではそれほどフィナステリドやデュタステリドでの抑うつ状態を誘導するというデータは見られません。今後の研究が望まれます。

いずれの論文でもわずか〜中等度抑うつ状態が増える、という程度で、自殺が増えているわけではありません。ですので極端にそれらの薬剤の内服による鬱を心配する必要もなく、かつ処方を躊躇させるデータでもありません。
もしこれらの薬を飲むことで気分が落ち込むなどの変化があれば薬を中止する、ということで十分であるという風に考えています。

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