男性の薄毛によく見られるのが、前頭部や頭頂部から進行するAGA(男性型脱毛症)の症状です。
AGAにはフィナステリドとミノキシジルの併用といった対策があります。
それぞれ効果や使用方法などが異なるため併用可能です。
今回はフィナステリド、ミノキシジルの併用について以下を重点的に解説します。
- フィナステリドとミノキシジルを併用するメリット・デメリット
- フィナステリドとミノキシジルの効果や副作用
- 併用しても効果が出ないときの要因
併用すると価格がいくらになるのか、知りたい方もご参考ください。
フィナステリドとミノキシジルを併用するメリット|脱毛予防と発毛促進の効果
有効成分フィナステリドとミノキシジルには以下の効果があります。
有効成分 | 効果 |
フィナステリド | 5α還元酵素Ⅱ型を阻害して脱毛を予防 |
ミノキシジル | 血管拡張と成長因子の産生で発毛を促進 |
2つの効果を期待できるのが、フィナステリドとミノキシジルを併用する最大のメリットです。
日本皮膚科学会の男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版では、フィナステリドとミノキシジルについて推奨度A(行うよう強く勧める)としています。
フィナステリド、ミノキシジルともにエビデンス(科学的根拠)のある有効成分です。
それぞれの有効成分の効果について詳しくは以下をご覧ください。
フィナステリドの効果|5α還元酵素Ⅱ型を阻害して脱毛を予防
有効成分フィナステリドには5α還元酵素Ⅱ型を阻害する効果があります。
5α還元酵素Ⅱ型は、AGAの発症に大きく関わる物質です。
AGA発症までの流れをご覧ください。
- 男性ホルモンのテストステロンが前頭部・頭頂部の毛乳頭に運ばれる
- テストステロンが前頭部・頭頂部の毛乳頭にある5α還元酵素Ⅱ型と結びつく
- テストステロンからジヒドロテストステロン(DHT)へと変換される
- DHTが前頭部・頭頂部の毛乳頭細胞にある受容体に結びつき、脱毛因子(TGF-β)が生成される
- 脱毛因子により髪の毛の成長期が短くなり、少しずつ軟毛化が進む
5α還元酵素Ⅱ型を阻害するフィナステリドは、AGAによる脱毛を予防したいときに有効な成分です。
日本人男性801名における観察研究により、99.4%の症例でフィナステリド(1mg/日を5年間内服)の効果が認められました。※
※出典:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版
ミノキシジルの効果|血管を拡張して発毛を促進
有効成分ミノキシジルには以下の効果があります。
効果1 | 血管の拡張(頭皮の血流を改善) |
効果2 | VEGFやIGF-1など成長因子の産生促進 |
髪の毛の太さと長さに大きく関わっているのがヘアサイクルです。ヘアサイクルには以下の期間があります。
ヘアサイクル | 特徴 | 正常時の期間(個人差あり) |
成長期 | 髪の毛が太く長く成長する | 3~5年ほど
(女性は4~6年ほど) |
退行期 | 髪の毛の成長が緩やかになる | 2~3週間ほど |
休止期 | 髪の毛の成長が完全に止まる | 3~4ヶ月ほど |
AGAを発症すると成長期が数ヶ月から1年ほどまで短くなると考えられています。
以下の成長因子で保持されているのが成長期です。
主な成長因子 | 主な作用 |
VEGF(血管内皮増殖因子) | 血管透過性、血管新生の促進作用 |
IGF-1(インスリン様成長因子1) | 成長促進作用、細胞の増殖など |
KGF(表皮細胞増殖因子) | 上皮細胞の増殖促進 |
ミノキシジルで頭皮の血管を拡張させると血流の改善により、毛母細胞の活性化が期待できます。
さらに成長因子の産生促進により、成長期の延長と発毛促進が期待できる有効成分です。
フィナステリドとミノキシジルの併用により、積極的な発毛を狙います。
男性300名を対象としたミノキシジルの国内試験(観察期間24週まで)により以下の結果がわかりました。
ミノキシジル濃度 | 脱毛部1cm2内の増加※ |
1% | 平均21.2本 |
5% | 平均26.4本 |
※出典:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版
男性におけるAGAの場合、1%濃度より高い効果を期待できるのが5%濃度のミノキシジルです。
フィナステリドとミノキシジルを併用するデメリット|2つの副作用リスクと2つの薬代
フィナステリドとミノキシジルの併用には以下のデメリットがあります。
- 副作用リスクが2つになる
- 薬代が2つになる
特に注意したいのが副作用が2つになるデメリットです。
それぞれの副作用や価格について詳しくは以下をご覧ください。
フィナステリドの副作用|性欲減退や勃起機能不全など
有効成分フィナステリドには以下の副作用があります。
皮膚への主な副作用 | そう痒症、蕁麻疹、発疹など |
男性機能への主な副作用 | 性欲減退、勃起機能不全、射精障害、精液量減少など |
肝臓への副作用 | 肝機能障害 |
その他の副作用 | 乳房圧痛、乳房肥大、抑うつ症状、めまい |
特に注意したいのが、頻度不明ながら肝機能障害といった重大な副作用です。
肝細胞が壊れるとAST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GTPの酵素値が上昇します。
それぞれの正常値(基準値)は以下の通りです。
検査項目 | 正常値(基準値) |
AST(GOT) | 7~38 IU/L |
ALT(GPT) | 4~44 IU/L |
γ-GTP | 男性は80IU/L以下/女性は30IU/L以下 |
血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP値がわかります。
フィナステリド使用後、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP値が大幅に上昇する場合は注意が必要です。
また、20歳未満や高齢者には有効性が確立されていません。
女性への適応もないため、フィナステリドを服用しないでください。
妊婦中の女性、妊娠の可能性がある女性は割れたフィナステリド錠を触らないほうがよいです。
触った指から成分が吸収されると、男性胎児の生殖器の発育に異常が出る可能性があります。
ただ、比較的頻度の高い性欲減退といった副作用でも1〜5%未満となっており、それほど高くはありません。
フィナステリドは医師から処方を受けている限り、安全性の高い有効成分です。
ミノキシジルの副作用|頭皮のかゆみや接触皮膚炎など
ミノキシジルの主な副作用は以下の通りです。
皮膚への副作用 | 頭皮の発疹、発赤、かゆみ、かぶれなど |
精神神経系への副作用 | 頭痛、気が遠くなる、めまい |
循環器系への副作用 | 胸の痛み、動悸 |
代謝系への副作用 | 急激な体重増加、手足のむくみ |
男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインでは男性でミノキシジル5%、女性でミノキシジル1%濃度を推奨しています。
20歳未満の方、ミノキシジルでアレルギー症状が出た方も使用しないでください。
傷や炎症などがある頭皮に使用すると症状が悪化する可能性があります。
高血圧や低血圧の方、心臓または腎臓に障害がある方、65歳以上の方、むくみが見られる方は医師または薬剤師に相談してからミノキシジルを使用してください。
フィナステリドの価格|1ヶ月8,000円ほど
プロペシアはフィナステリドを配合する処方箋医薬品です。
医師による処方箋が必要であり、ドラッグストアなどでは市販されていません。
プロペシアの処方が受けられる医療機関によって異なりますが、1ヶ月8,000円ほどの価格が目安です。
プロペシアにはジェネリックがあります。
フィナステリド錠1mg「ファイザー」はプロペシアのジェネリックの1つです。
特許が切れた先発医薬品を他の製薬会社が製造・販売する後発医薬品をジェネリックと言います。
先発医薬品とほぼ同じ効果ながら、価格の安さにメリットがある医薬品です。
フィナステリド錠1mg「ファイザー」であれば、1ヶ月4,000~5,000円ほどで処方が受けられる場合があります。
ミノキシジルの価格|1ヶ月5,000円ほど
ミノキシジル配合の発毛剤であれば市販されています。
国内の主なミノキシジル5%発毛剤は以下の通りです。
発毛剤 | 通常価格(税込) |
大正製薬 リアップX5プラスネオ | 7,753円 |
アンファー スカルプD メディカルミノキ5 | 7,800円 |
ロート製薬 リグロEX5エナジー | 5,940円 |
医療機関によっては海外のミノキシジル5%発毛剤「ロゲイン」の処方が受けられます。
ロゲインを処方する医療機関によって異なりますが、1ヶ月5,000円ほどの価格が目安です。
医療機関より処方されたプロペシアとロゲインを併用する場合、以下の薬代がかかります。
プロペシア | 1ヶ月8,000円 |
ロゲイン | 1ヶ月5,000円 |
合計 | 1ヶ月13,000円 |
薬代を節約したい方は、プロペシアのジェネリックを希望できるかどうか、医師に相談するとよいでしょう。
また、満足できる発毛が見られた後、フィナステリドのみに切り替えて脱毛を予防し、現状維持するといった選択肢もあります。
ミノキシジルを止めた後の薬代はフィナステリドのみです。
フィナステリドとミノキシジルの併用効果が出ないときの要因
フィナステリドとミノキシジルを併用しても効果が出ない場合は、以下の要因が考えられます。
- 脱毛の原因がAGA以外である
- 薬の使用方法が間違っている
- 個人輸入した偽物の薬を使っている
それぞれの要因について詳しくは以下をご覧ください。
脱毛の原因がAGA以外である
フィナステリド配合のプロペシアは男性型脱毛症用薬です。
脱毛の原因がAGA以外だった場合、フィナステリドの効果は期待できません。
また、大正製薬リアップの公式HPには以下の記載があります。
~引用~
「壮年性脱毛症における発毛・育毛・脱毛(抜け毛)の進行予防」の効能が認められている男性用発毛剤(第1類医薬品)です。
引用元:大正製薬リアップX5プラスネオの公式HP
壮年性脱毛症は壮年期(25~44歳頃)に発症するAGAの一種です。
5%ミノキシジル発毛剤の場合、脱毛の原因が壮年性脱毛症以外だったときも使用しないでください。
たとえば以下のような脱毛症です。
円形脱毛症 | 免疫機能の異常で発症 |
甲状腺疾患(甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症)による脱毛症 | 甲状腺ホルモンの異常で発症 |
脱毛の原因がAGAなのか、他に原因があるのか、わからないときは医療機関で診てもらうとよいでしょう。
薬の使用方法が間違っている
フィナステリドやミノキシジルの使用方法が間違っている場合、十分な効果が出ない可能性があります。
たとえば以下のような間違った使用方法です。
フィナステリドの間違った使用方法 | 数日ごと、1週間ごとに服用 |
ミノキシジルの間違った使用方法 | 1日1回、または数日ごとに頭皮に塗布 |
フィナステリド、ミノキシジルの正しい使用方法については以下をご覧ください。
有効成分 | 使用方法 |
フィナステリド | 男性成人は0.2mgを1日1回服用/増量する場合は1日1mgが上限 |
ミノキシジル | 男性成人は1日2回、脱毛部分の頭皮に塗布 |
大正製薬のリアップは1回あたり1mL使用します。
大量に頭皮へ塗布しても効果は上がらないため、正しい用法・用量を守りましょう。
また、フィナステリド、ミノキシジルともに効果の即効性はありません。
1~2ヶ月といった短期間で使用を中止すると、十分な効果が出ない場合があります。
効果を実感できるまでは3~6ヶ月ほどが目安です。(個人差あり)
フィナステリド、ミノキシジルともに使用を中止すると効果が切れてしまいます。
効果を実感できた後も使用の継続が大切です。
ただし、6ヶ月過ぎても効果が出ない場合は使用を中止してください。
また、フィナステリドとミノキシジルの使用開始後、初期脱毛が生じる場合があります。
初期脱毛を副作用と思い、使用を中止したときも効果が切れてしまいます。
休止期だった毛根が成長期に入り、伸びてきた髪の毛に押し出されるように抜けていくのが初期脱毛です。
つまり、初期脱毛は有効成分の効果によって起こります。
初期脱毛がはじまるのは使用開始より10日~1ヶ月ほど、自然に治まるまで1ヶ月半ほどが目安です。(個人差あり)
ただし、3ヶ月過ぎても初期脱毛が治まらない場合は、有効成分やAGA以外の原因が考えられるため、早めに医師に診てもらってください。
個人輸入した偽物の薬を使っている
海外医薬品は個人輸入でも入手できます。
薬代を節約できるのが個人輸入する最大のメリットです。
しかし、プロペシアを個人輸入すると偽物を掴まされる恐れがあります。
偽物のプロペシアは効果が期待できないうえに、どのような副作用が出るのかわかりません。
偽物の薬で身体に異常が出ても、それは自己責任です。
プロペシアを処方する医療機関では正規品を取り扱っています。
本物かどうか心配しながら続けるより、正規品のプロペシアを医療機関で処方してもらったほうがよいでしょう。
まとめ
フィナステリドとミノキシジルの併用について、以下を解説してきました。
- フィナステリドで脱毛を予防しながらミノキシジルで発毛促進
- フィナステリド、ミノキシジルともに推奨度A、科学的根拠のある有効成分
- フィナステリド錠は1日1回服用(1日1mgが上限)
- ミノキシジル配合発毛剤は1日2回頭皮に塗布
- 効果を実感できるまで3~6ヶ月ほどかかる
- 併用したときの価格は1ヶ月13,000円が目安
- ジェネリックなら薬代を節約できる
併用するときに注意したいのが2つの副作用リスクです。
たとえばフィナステリドで性欲減退、ミノキシジルで頭皮のかゆみ、両方の副作用に悩まされるケースが考えられます。
特にフィナステリドは肝機能障害といった重大な副作用が出る可能性があるため、医師の指示のもとでの併用がおすすめです。