男性型脱毛症(AGA)は男性ホルモンと遺伝が大きく影響すると考えられています。20代より年代が進むごとにAGAの発症頻度が高まりますが、すべての薄毛の男性でAGAとは限りません
そこで今回はAGAについて、以下の点を中心に解説します。
【今回の記事でわかること】
- AGAの見分け方
- 将来のAGA発症リスクがわかる遺伝子検査
- AGA内服薬の効果が出やすい早期治療の目安
AGAによる抜け毛や薄毛が気になる方はご参考ください。
AGAの見分け方|抜け毛本数が大幅に増えた・額の生え際や頭頂部から薄くなりはじめた
AGAには以下のような見分け方があります。
【AGAの見分け方】
- 1日あたりの抜け毛本数が大幅に増えた
- 額の生え際や頭頂部から少しずつ薄くなりはじめた
次からは、それぞれの見分け方について詳しく解説します。
あわせて男性型脱毛症と女性型脱毛症との症状の違いや、円形脱毛症との症状の違いも解説するため気になる方はご参考ください。
1日あたりの抜け毛本数が大幅に増えた
1日あたり50~100本ほどの正常な抜け毛本数であれば問題ないでしょう。
しかし、1日あたりの抜け毛本数が200~300本以上など大幅に増えたときは、AGAの症状がはじまった可能性があります。
AGAの兆候なのかどうか、自己診断したいときに役立つのが以下の点です。
【AGAの自己診断】
- 枕に付く抜け毛、シャンプーでの抜け毛が増えた
- 髪が細く弱々しくなった
- 毛先の細い抜け毛が増えた
- 髪のハリやコシがなくなってきた
- 髪のボリュームが減ってきた
- 髪型の分け目が目立ちはじめた
抜け毛が増えるとともに、ハリやコシ、ボリュームなど髪質も変化していくのがAGAの兆候です。
額の生え際や頭頂部から少しずつ薄くなりはじめた
AGAには以下の症状があり、人によって異なります。
【AGAの代表的な症状】
- M字型(額の生え際から髪が後退していく)
- O字型(頭頂部から髪が薄くなる)
- U字型(額の生え際〜頭頂部にかけて髪が薄くなる)
生え際や頭頂部から少しずつ薄くなりはじめるのが、AGA特有の症状です。
また、AGAは以下のように、年代とともに発症頻度が高くなる傾向があります。
【AGA年代ごとの発症頻度】
- 20代で約10%
- 30代で20%
- 40代で30%
- 50代以降で40数%
発症頻度は低いものの、20代でも起こり得るのがAGAの症状です。
男性型脱毛症と女性型脱毛症との症状の違い|円形脱毛症とも症状が異なる
女性にも女性型脱毛症(FPHL)と呼ばれる薄毛の症状があります。
男性のAGAと違い、女性のFPHLでは頭頂部の比較的広い範囲の髪が薄くなる症状、更年期(45〜55歳頃が一般的)に発症頻度が高まる傾向が見られます。
また、少しずつ症状が進行するAGAと違い、髪が急激に抜けるのが円形脱毛症です。円形脱毛症の症状は以下をご覧ください。
【円形脱毛症の代表的な症状】
- 単発型(コインほどの大きさで円形の脱毛斑ができる)
- 多発型(円形の脱毛斑が2つ以上できる)
- 蛇行型(後頭部から側頭部の生え際にかけて、細長く結合した脱毛斑ができる)
- 全頭型(脱毛斑が頭部全体に広がる)
- 汎発型(眉毛やまつ毛など、頭部以外の体毛も抜ける)
上記の症状が見られたときは、AGAではなく円形脱毛症を発症した可能性があります。
AGA遺伝子検査で将来の発症リスクがわかる|AGAの症状が見られたら早期治療
次からは、将来のAGA発症リスクがわかるAGA遺伝子検査について解説します。AGAの早期治療の目安が気になる方もご参考ください。
AGA遺伝子検査でわかる将来のAGA発症リスク
AGAは以下の流れで発症します。
【AGA発症までの流れ】
- 男性ホルモンのテストステロンと5α還元酵素が結合する
- ジヒドロテストステロン(DHT)へと代謝される
- DHTが男性ホルモン受容体と結合し、脱毛因子TGF-βが生成される
- TGF-βによりヘアサイクルの成長期が短くなり、細く短い髪が増えていく
「5α還元酵素の活性度」や「受容体の感受性」が高い遺伝子を受け継いでいる人ほど、将来のAGA発症リスクが高いです。
AGA発症リスクを知りたいときに有効なのが、医療機関で受けられるAGA遺伝子検査です。
私たち人にはAR遺伝子の配列があり、CAGとGGCの塩基配列が何度も繰り返される部分があります。
以下のように、CAG+GGCのリピート数合計によりAGAの発症リスクを判定するのがAGA遺伝子検査です。
CAG+GGCのリピート数合計 | AGAの発症リスク |
標準値38以下 | 高いと判定 |
42以上 | 低いと判定 |
医療機関でAGA遺伝子検査を受けると、1万5,000~2万円ほどの料金がかかります。しかし、人の遺伝子は原則変わらないため、一生に一度AGA遺伝子検査を受けるだけです。
医療機関のほか、市販のAGA遺伝子検査キットで発症リスクを調べる方法もあります。料金は8,000円ほどであり、医療機関のAGA遺伝子検査より料金が安いです。
ただし、AGA遺伝子検査はAGAであるかどうか確定するものではありません。
医療機関でのAGA診断は比較的容易です。薄毛の症状がすでにはじまっており、AGAであるか判断に迷うときは医療機関で診断を受けたほうがよいでしょう。
医療機関でAGAと診断されたときは、その医療機関でAGA治療が受けられます。
ハミルトン・ノーウッド分類がIV未満、年齢40歳未満が早期治療の目安
以下のハミルトン・ノーウッド分類により、AGAの症状進行具合は細かく分類されています。
分類 | 症状の進行具合 |
I型 | 生え際から後退しはじめるAGAの初期症状 |
II型 | I型よりもさらに生え際の後退が進行 |
II Vertex型 | II型の症状+頭頂部がO字型に薄くなりはじめる |
III型 | 生え際からM字型に進行し、さらに頭頂部のボリュームも減ってくる |
III Vertex型 | Ⅲ型の症状+頭頂部のO字型が大きくなる |
Ⅳ型 | 生え際がM字型、頭頂部がO字型に薄くなる |
Ⅴ型 | Ⅳ型の症状がさらに進行し、生え際の後退が頭頂部までもう少しでつながる状態 |
Ⅵ型 | 生え際から頭頂部にかけてU字型になるまで進行 |
Ⅶ型 | Ⅵ型からさらに症状が進行し、側頭部も薄くなる |
医療機関でのAGA治療でよく用いられているのが、内服薬のプロペシアです。プロペシアの有効成分フィナステリドには、5α還元酵素2型を阻害する効果があります。
以下のように、AGAの症状が軽いほど、年齢が若いほど、早期治療となりフィナステリドの効果が高まりやすいです。
【AGA早期治療の目安】
- ハミルトン・ノーウッド分類がIV未満
- 年齢40歳未満
ただし、人によってはフィナステリドを早めに使用しても十分な効果が出ない場合があります。
フィナステリドの効果が出やすい体質かどうか、知りたいときにも便利なのがAGA遺伝子検査です。フィナステリドの効果を判定するときは、以下のようにCAGリピート数を用います。
【AGA遺伝子検査によるフィナステリドの効果判定】
CAGリピート数 | フィナステリドの効果判定 |
24以下 | 髪の微増が見込める |
22以下 | 髪の中程度増加が見込める |
20以下 | 髪の高度増加が見込める |
CAGリピート数が27以上の場合、フィナステリドの効果が出にくい体質と考えられるため、医師と相談しながら、外用薬や注入療法などほかの治療方法を検討するとよいでしょう。
まとめ
今回はAGAの見分け方について解説してきました。生え際からM字型、頭頂部からO字型に薄くなるのがAGA特有の症状です。
初期症状であっても、放置すると生え際と頭頂部がつながるU字型まで進行する恐れがあります。AGAの兆候が見られたら、U字型まで進行しないうちに早期治療をはじめるとよいでしょう。
ハミルトン・ノーウッド分類がIV未満、年齢40歳未満がフィナステリドによる早期治療の目安です。
母方の祖父が若い頃から薄毛だった場合、AGA遺伝子検査を受けておくと早期治療に役立ちます。
AGA遺伝子検査により将来の発症リスクが高いと判定されたときは日頃から髪質をチェックし、異変が見られたらすぐに医師の診断を受けるとよいでしょう。