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自己免疫疾患と円形脱毛症の関係

これまで円形脱毛症は、ストレスのせいで起こるものだと言われてきました。しかし最近では、ストレスではなく自己免疫疾患との関係が深いのではと考えられています。

コイン状に脱毛が見られることから10円ハゲとも言われる円形脱毛症は、症状が進むと髪の毛全体が脱毛してしまうこともある疾患です。ここでは円形脱毛症の原因や自己免疫疾患との関係性、治療方法などを詳しく解説します。

円形脱毛症とは

円形脱毛症は、髪の毛が円形に抜け落ちてしまう疾患のことです。ストレスを抱えやすい年代に見られる印象がありますが、幼児期に発症する方もいれば高齢になって発症する方もいます。

一般に局所的に脱毛することが多いものの、症状によっては頭皮全体が抜け落ちてしまうこともあるほど、症状が多岐にわたることが特徴です。大きく次の5つに症状が分類されています。

・単発性通常型
円形の脱毛が1か所だけできます。

・多発性通常型
円形の脱毛が数か所にできるものです。

・全頭型
髪の毛全体に脱毛が見られます。

・全身型(汎発型)
髪の毛だけでなく眉毛やまつ毛、体毛にまで脱毛が見られるものです。

・蛇行型
円形ではなく、連なった形で脱毛が見られます。生え際によく見られ、難治性のことが多いいです。

円形脱毛症が発症する原因

円形脱毛症の原因は、まだハッキリとは分かっていません。そのため円形脱毛症の原因ではと言われているものがいくつか存在します。その中でもとくに関係が深いと言われているものを見ていきましょう。

自己免疫疾患

円形脱毛症の原因としてもっとも可能性が高いと言われているのが自己免疫疾患です。自己免疫疾患とは、免疫系が正常に働かなくなった状態を言います。本来なら免疫は、外部から侵入したウイルスや菌など、体にとって害になるものしか反応しません。

しかし何らかの原因により、免疫系が自分の体を傷つけてしまうことがあります。これが自己免疫疾患です。関節リウマチ、1型糖尿病などが代表的んです。自分の体に存在している免疫系が毛根を攻撃することで、脱毛が起きてしまいます。

ストレス

ストレスも円形脱毛症の原因としてよく知られているものです。むしろ少し前までは、ストレスが円形脱毛症の原因だろうと言われてきました。しかし、日常生活でストレスがかかる場面は多く、円形脱毛症を発症してる人もそうでない人もストレスにさらされていることは多くあり、ストレスと円形脱毛症の因果関係を示すことは困難です。ある極限までストレスのかかるある紛争地域を調べたところ、特に円形脱毛症の発症リスクは上がらなかったそうです。これらのことから現在では、ストレスは円形脱毛症の発症に関係しているかもしれないが、直接的な関係は少ない、という考え方が主流となっています。

アトピー

円形脱毛症は、アトピーとも関係があると考えられています。ある研究によると、円形脱毛症の患者さんのうち、41%にあたる方はアトピー性疾患をもっていると言われているのです。またアトピー性皮膚炎の既往、もしくは現病歴のある方、家族歴のある方は円形脱毛症が重症化しやすいことははっきりとわかっています。
アトピー性皮膚炎の方が円形脱毛症を発症した場合は特に注意が必要です。

遺伝

円形脱毛症は遺伝的な影響が強く、8.4%に家族内発生が見られます。一卵性双生児では円形脱毛症の発症一致率は55%と極めて高くなります。また1親等に円形脱毛症の人がいれば発症率は10倍に増えるというデータもあります。
これらのことから円形脱毛症と遺伝との関係が強く示唆されます。ただし単一遺伝子によるものではなく、複数の遺伝子が合わさりあって円形脱毛症の発症に関与しているものと推測されています。

円形脱毛症が合併症として起こる可能性がある自己免疫疾患

現在もっとも円形脱毛症と関わりが深いと言われている自己免疫疾患には、いくつか種類があります。どのような自己免疫疾患が円形脱毛症を引き起こす可能性があるのかについてここでは見ていきましょう。

膠原病

膠原病とは、皮膚や筋肉などに炎症や変性が起こる疾患をまとめて指す言葉です。具体的には関節リウマチや全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎や結節性多発動脈炎などが膠原病に含まれています。どれも免疫系が外部から侵入したウイルスや菌ではなく、自分自身の体を攻撃することで起こるものです。膠原病をもっている方は、免疫系が自分を攻撃しやすい状態になっているので、円形脱毛症になりやすいと考えられています。

橋本病

橋本病とは甲状腺の機能が低下してしまう疾患のことです。橋本病も免疫系の異常によって起こります。本来は害がないはずの甲状腺を免疫系が攻撃することで、甲状腺に炎症が起きて機能が低下してしまうのです。甲状腺の機能が低下することで、全身のむくみや発汗量の低下、食欲の低下や皮膚の乾燥などが見られます。

バセドウ病

バセドウ病は橋本病とは真逆で、甲状腺の機能が亢進する疾患です。体内で作られた抗体が甲状腺を攻撃することで、働きが活発になりさまざまな症状をきたします。よく見られるのは、発汗量の増加や眼球突出、頻脈などです。バセドウ病も円形脱毛症を合併することがある自己免疫疾患として知られています。

円形脱毛症の治療方法

円形脱毛症の治療には、いくつか種類があります。どのような治療が用いられるのか、代表的なものをここでは見ていきましょう。

ステロイド

脱毛している範囲が狭い場合は、ステロイド剤の塗り薬が使われます。ステロイド剤には免疫反応を抑える働きがあるので、使用することで円形脱毛症の症状を抑えることができるのです。範囲が狭くても円形脱毛症の症状が長引く場合は、ステロイド剤の注射も行われます。

また症状の進行スピードが早い場合はステロイド剤を内服することもあります。ただし内服の場合は糖尿病や脂質代謝異常症などの副作用が起こるリスクが高まるため、長くても2~3ヶ月程度にとどめておいた方がいいでしょう。内服をやめた後の再発が問題になることもあります。

局所免疫療法

円形脱毛症による脱毛の範囲が広く、なおかつ症状が6か月以上続いている場合は、局所免疫療法も適応となります。局所免疫療法とは、SADBEやDPCPなど皮膚にかぶれを起こす薬剤をあえて頭皮に塗ることで、炎症を繰り返し発生させ治療を行っていく方法です。局所免疫療法の有効率は60%以上と言われており、円形脱毛症の治療としてはとくに治療効果が高いと言われています。保険適応がないことと、文字通りかぶれることが問題となります。

外用剤

脱毛がまだ始まったばかりで範囲もそこまで広くない場合は、塩化カルプロニウムの外用剤も有効です。塩化カルプロニウムは、抜け毛を予防したり発毛を促進したりする効果が認められている医薬品成分として知られています。血行を促進する働きがあることから、円形脱毛症だけでなくAGA(男性型脱毛症)にも使われている成分です。

円形脱毛症とAGA(男性型脱毛症)との違い

脱毛症といえば、円形脱毛症以外にAGAもよく知られています。どちらも症状として脱毛が見られるため、違いがよく分からない方もいるかもしれません。しかしこの2つは、同じ脱毛というくくりではありますが、まったくの別物です。

AGAは男性ホルモンの働きによって起きる

円形脱毛症は自己免疫疾患やストレスなどによって起こります。しかしAGAは男性ホルモンが原因となって起こるものです。男性ホルモンのうちジヒドロテストステロン(DHT)が髪の毛の成長を妨げることで脱毛が起こります。

脱毛は生え際や頭頂部に見られる

円形脱毛症は典型的にはコインのような形に円形に刈り取られたように脱毛が見られますが、AGAでは生え際や頭頂部で比較的広い範囲に脱毛が起きることが特徴です。AGAの場合は、コインのような形に脱毛することはないので、どこからどのように脱毛しているのかを見ることで円形脱毛症なのかAGAなのかを見分けることができます。ただし円形脱毛症の特殊例においては、円形脱毛症とAGAがにる場合もあります。

まとめ

円形脱毛症はストレスが原因で起こると言われていましたが、現在は自己免疫疾患による影響が大きいと考えられています。自己免疫疾患とは免疫系がウイルスや菌ではなく、自分の体を攻撃することです。膠原病や全身性エリテマトーデス、橋本病やバセドウ病で円形脱毛症を合併することがあると言われています。ステロイド剤や局所免疫療法、塩化カルプロニウムの外用剤が代表的な治療方法です。

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