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FPHLやFAGAって何?女性の脱毛症について

男性の脱毛症をAGAと呼ぶのに対して、女性の脱毛症はFAGAと呼ばれてきました。しかし近年では、FPHLという新しい呼び方も誕生しています。

「FPHLとFAGAは何が違うの?」
「FPHLはこれまでの脱毛症とはまた違うものなの?」

と疑問に思われている方も多いでしょう。FPHLとはいったい何なのか、FAGAとは何が違うのかなどをここでは詳しく解説します。

FPHLは女性の薄毛を定義する新しい概念

FPHLという言葉は、比較的最近になってできたものです。これまでは女性の薄毛の原因と言えば、FPHLではなくFAGAでした。FAGAではなくFPHLと呼ばれることが増えてきた原因は何でしょうか。

日本皮膚科学会が作成しているガイドラインを参考にしながら、理由をご紹介します。

2010年版ガイドラインまでは「FAGA」と呼ばれていた

脱毛症の原因や病態、治療方法などがまとめられたガイドラインが不定期にですが更新されています。もっとも新しいのは「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」です。これの1つ前は「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010 年版)」という名前でした。

2010年版のガイドラインを見ると、女性の脱毛症に関しては“女性では男性と異なり、頭頂部の比較的広い範囲の頭髪が薄くなるパターンとして観察される”と記載がされています。

ガイドラインの名称が「男性型脱毛症診療ガイドライン」となっていることからも、この時点ではまだ男性と女性の脱毛症をはっきり分けるような動きは見られませんでした。

そのため2017年版のガイドラインが発表されるまでは、男性の脱毛症をAGA(androgenetic alopecia)と呼ぶのに対して、女性の脱毛症を「女性の男性型脱毛症=FAGA(female androgenetic alopecia)」と呼んでいたのです。「androgenetic」という単語が使われていることから、両者とも男性ホルモンが関係して起こる脱毛症という意味をもちます。

FPHLは2017年版ガイドラインで登場した新しい概念

2010年版のガイドラインではFAGAと呼ばれていた女性の脱毛症は、2017年版のガイドラインを期にFPHLと呼ばれるようになりました。その発端となった記載が次のものです。

“男性ホルモン依存性では病態が説明できない場合も有り、現在では男性型脱毛症より「女性型脱毛症(female pattern hair loss)」という病名を用いることが国際的にも多くなってきている”

女性の脱毛症は、男性ホルモンの影響により起こるのではと考えられていますが、必ずしも男性ホルモンの影響だけで説明できるものではありません。

しかし、これまで使われていた「女性の男性型脱毛症(=FAGA)」という呼び方だと、男性ホルモンが原因となって起こる脱毛症を主に指すことになります。これでは女性の脱毛症を表す正しい呼び方とは言えません。

そこで女性の脱毛症は男性ホルモンだけでは説明がつかないことを考慮して「女性型脱毛症(=FPHL)」という呼び方が新しくできたのです。FAGAとは違ってFPHLには、男性ホルモンを表す「androgenetic」という単語が使われていません。

FPHLとFAGAの違い

ここでもう一度、FPHLとFAGAの違いを見てみましょう。

・FPHL(female pattern hair loss)
・FAGA(female androgenetic alopecia)

FPHLは女性型脱毛症、FAGAは女性の男性型脱毛症という意味です。FPHLだと男性ホルモンを表す「androgenetic」という単語が入っていないため、男性ホルモンに依存しない脱毛症も含めて女性の脱毛を表す言葉になります。

一方で昔から使われていたFAGAは「androgenetic」という単語が使われていることからも、男性ホルモンに依存して起こる脱毛症を指します。

もともとはFPHLもFAGAも同じように女性の脱毛症を指す言葉です。FPHLもFAGAも、指している病態は変わりません。ところが女性の脱毛症の原因が男性ホルモンだけでは説明できないという考え方が浸透してきたこともあり、FAGAではなくFPHLという呼び方が主流になってきました。

つまりFPHLとFAGAは、同じ病態を指すものの意味している概念が異なると言えるでしょう。

FPHLの症状と分類

男性の脱毛症では生え際や頭頂部に集中して脱毛が見られますが、女性だと頭頂部が全体的に薄くなっていくことが特徴です。局所的に脱毛が起こるというよりは、頭皮全体が薄くなっていきます。このように脱毛の進行具合が男性と女性とでは異なるものです。

女性の脱毛症の分類には、ルードヴィッヒ分類が使われることが一般的となっています。次のようにステージ1~3型まで分類されており、ステージが進むほど、脱毛が進行している状態です。

ステージ1

正面から頭頂部にかけて脱毛が見られる状態です。女性の脱毛症の初期段階と言えます。

ステージ2

Ⅰ型からさらに脱毛症が進行したものがⅡ型です。脱毛の範囲がⅠ型よりも広くなっています。

ステージ3

さらに脱毛の範囲が広がると、正面から見ても全体的に薄毛が目立つようになります。

治療して効果が見られやすいと言われているのは、ステージ1とステージ2の状態です。ステージ3まで進むと、治療効果が出にくいと言われています。そのため薄毛が気になると感じたら、できるだけ早く治療を開始することが大切です。

FPHLと混同されやすい疾患

FPHLではないにもかかわらず、脱毛症状が見られる疾患がいくつかあります。他の疾患が原因で脱毛の症状が出ている場合は、FPHLとは違った対処や治療が必要になるので注意しましょう。

牽引性脱毛症

髪の毛が引っ張られることにより、脱毛が生じるものです。同じ場所で結ぶことが多い方、分け目をずっと同じにしている方がなりやすいと言われています。髪の毛が引っ張られた部分の血流が悪くなることで脱毛がおきます。

甲状腺機能に関わる疾患

甲状腺の機能が低下する橋本病や甲状腺機能低下症になると、薄毛が見られることがあります。これは甲状腺の機能が落ちることで、髪の毛の生え変わりがスムーズにいかなくなるためです。寒がりになった、体重が増えた、疲れが取れないなどの症状がある場合は甲状腺機能の検査を念のため受けてみましょう。

肝機能障害

肝臓はたんぱく質の合成を行う役割をもっています。髪の毛の約80%がたんぱく質でできていることもあり、たんぱく質は髪の毛にとって欠かせない栄養素です。肝機能が障害されるとたんぱく質を合成する力が衰えるため、薄毛になることがあります。

膠原病

膠原病とは関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどのように、免疫系がウイルスや菌ではなく自分の体に反応することで起こる疾患を指します。膠原病の方は、免疫系が自分の髪の毛に対しても働いてしまうため、抜け毛が起きてしまう場合があるのです。

円形脱毛症

円形脱毛症も免疫系が異常に働くことで起こると言われています。コイン状に脱毛が見られることが多いのですが、人によっては広範囲に脱毛が見られることもあります。

まとめ

FPHLとは、これまでFAGAと呼ばれていた女性の脱毛の呼び名を新しくしたものです。男性ホルモンの影響だけでは女性の薄毛を説明できないことから、FAGAではなくFPHLと呼ぶことか少しずつ増えてきました。女性の脱毛は男性とは違い、頭頂部が全体的に薄くなることが特徴です。症状が進行すると治療が難しくなるので、早めに治療を始めましょう。

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