出産後は子育てでバタバタとして、不安なことや大変なことがたくさん起こり、心身ともに不安定になりやすい時期です。
子育ての悩みとは別に出産後の女性をさらに悩ませるのが抜け毛でしょう。
出産後の脱毛は「出産後脱毛症」や「分娩後脱毛症」とも呼ばれており、産後は非常に多くの女性が悩まされています。
なぜ産後は抜け毛が増えてしまうのでしょうか。
産後の抜け毛はいつまで続いて、どうすれば治るのでしょうか。
出産後に抜け毛が増える原因
出産後の女性は、70%以上もの方が薄毛を経験していると言われています。
抜け毛の程度は人それぞれで、抜け毛が少し増えたという方から、ごっそり抜けてしまいウィッグや帽子が手放せなくなる方までいるものです。
病気なのかな?と不安になるほど抜け毛がある方は、決して少なくありません。
毛髪サイクルの変化
妊娠中はエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が通常の何倍にも増えています。
このエストロゲンが実は産後の脱毛に関係しているのです。
エストロゲンといえば女性らしい体つきを保ったりコラーゲンの生成を促したりなどの働きをよく耳にするかもしれません。
妊娠中は赤ちゃんをしっかり育てるためにも必要となります。
この他に髪の毛の成長を促す働きも持っていることが特徴です。
つまり妊娠中はエストロゲンの働きによって髪の毛が抜けにくい状態になっていると言えます。
ところが出産を終えると、エストロゲンは再び元の分泌量へと戻っていきます。
エストロゲンと同時にプロゲステロン(黄体ホルモン)も急激に減少していくため、出産後はさまざまな心身の不調を感じやすい時期です。
妊娠中に抜けにくくなっていた髪の毛が、エストロゲンの分泌量の低下に合わせて一斉に抜け始めるため、出産後は抜け毛がどうしても増えてしまいます。
本来なら妊娠中に抜けるはずだった髪の毛が、出産後に一気に抜けてしまうイメージです。
これは出産を期に多くの髪の毛が休止期に入ることで起こります。
休止期とは髪の毛の成長サイクルのうち、成長がストップしている期間のことです。
一般に3~4か月ほど休止期は続きます。
髪の毛が抜けるとしばらくは生えてこないため、ボリュームが気になってしまうのです。
出産に伴う体力の消耗
インフルエンザ、肺炎など熱病、急速な栄養状態の低下、交通事故、大量出血などの大病に伴い休止期脱毛を発症しうることが知られています。
細胞が体の回復を優先させるため、髪の毛の成長を停止させてしまうため、と考えられています。
出産も体力を大幅に消耗しますので、同様に休止期脱毛を発症し得ることが知られてています。
出産後の抜け毛はいつまで続くのか
抜け毛に悩んでいる方の話を聞くと、産後2~3か月で気になり始めた方が多いようです。
ようやく子育てのコツが少しつかめたくらいの時期でしょうか。
髪の毛が抜け始めると「元通りちゃんと髪の毛は生えてくるのかな?」と心配になるものです。
抜け毛の症状は6か月から1年ほどで自然と改善します。
改善してくるまでの期間に幅があるのは、人によって抜け毛の量も、新しく髪の毛が生えてくるスピードも異なるためです。
休止期に入った髪の毛は一般的に3~4か月で成長期へと移行していきます。
成長期とは名前の通り髪の毛が太く長く成長し頭皮の上に顔を出す時期のことです。
この時期になると髪の毛が伸びてくるので、短い毛がツンツンと生えてきたのを実感できるでしょう。
しかし髪の毛が成長期に移行したからといって、すぐに元通りフサフサというわけにはいきません。
少しずつ抜けた髪の毛が成長し始めるので、抜け毛が改善してきたと実感するには少々タイムラグがあります。
出産後の抜け毛の対策方法
朝起きると枕にびっしりと付いている髪の毛。
シャワーに入れば排水溝にどんどん溜まっていき、床にも抜けた髪の毛があちこちに…。
こんな状態が続くと、気が滅入ってしまうものです。
どうすれば産後の抜け毛を少しでも抑えられるのでしょうか。
1番の対策は待つこと
抜け毛はホルモンの影響で一気に髪の毛が休止期に入ることが大きな原因だと考えられています。
つまりホルモンバランスが安定して、髪の毛が成長期に入れば自然と髪の毛は元に戻っていくのです。
「何もしないで待つ」のも辛いことかとは思いますが、時間が解決してくれる場合も多いです。
パントガール
パントガールという飲み薬は保険適応はないのですが、出産後脱毛症に関して効果をしめすかなり高いエビデンスを有しています。
パントガールはケラチン、L-システイン、パラアミノ安息香酸などのアミノ酸やビタミン、ミネラル、酵母からなる薬で授乳中も問題無く服用することができます。
ドイツにて出産後脱毛症に対してランダム化比較試験がおこなわれ、かつ有意差をもって効果ありと判定されています。
こんな症状が出たら注意
出産後の脱毛だったと思っていたら、実は円形脱毛症という別の疾患だったケースもまれにあります。
円形脱毛症とは、本来は異物を攻撃するはずの免疫が誤って自分の髪の毛を攻撃することで起こるものです。
円形脱毛症の重症形では髪の毛だけに限らず眉毛やまつげなど、全身の毛が抜けていきます。
最終的には髪の毛が1本もない状態になることもある疾患です。
あまりにも脱毛が
シビアだったり、刈り取られたように円形に髪の毛が抜けていく場合、髪の毛以外にも脱毛が見られたりする場合は皮膚科の受診をおすすめします。
まとめ
産後は毛周期が一気に休止期へ入ったり、ホルモンバランスが変化したりすることで抜け毛が増えやすい時期です。
急に抜け毛の量が増えてびっくりしてしまうかもしれませんが、ほとんどは6か月から1年ほどで自然に改善していきます。
抜け毛が落ち着くまで待つことも可能です。
早く良くしたい場合は、パントガールの内服やミノキシジルの外用をトライするといいでしょう。