ワカメや昆布などの海藻が髪の毛に良いという話をよく耳にします。中には「ワカメが嫌いであまり食べなかったから薄毛になったのかな…」と言われる方もいるほど、この話は浸透しているようです。
ワカメや昆布はスーパーで手軽に手に入れられるので、薄毛に良いならぜひ食事に摂り入れたいところでしょう。ここでは、はたしてこれらの海藻は本当に効果があるのか、どうすればしっかりとした薄毛対策ができるのかをご紹介します。
ワカメや昆布が薄毛に良いと言われている理由
ワカメや昆布を食べると薄毛に良いらしいという話は、何十年も前から言われていることです。日々の会話でも「ワカメを食べないと薄毛になるよ」と言われるくらい、多くの世代に広く知られています。そもそもなぜ、ワカメや昆布が薄毛に良いと言われるようになったのでしょうか。
ミネラルが豊富だから
ワカメや昆布は、ミネラルの宝庫と言われるくらい、たくさんのミネラルを含んでいます。
〈カットわかめ100gあたりのミネラル量〉
ナトリウム | 9,500mg |
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カリウム | 440mg |
カルシウム | 820mg |
マグネシウム | 410mg |
リン | 290mg |
鉄 | 6.1mg |
亜鉛 | 2.8mg |
銅 | 0.16mg |
〈昆布100g(可食部)あたりのミネラル量〉
ナトリウム | 2,177mg |
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カリウム | 5,183mg |
カルシウム | 668mg |
マグネシウム | 583mg |
リン | 245mg |
鉄 | 4.4mg |
亜鉛 | 1.0mg |
銅 | 0.1mg |
栄養価が高いと言われている小松菜でも100gあたりナトリウムが15mg、カルシウムが170mg程度ですので、ワカメや昆布がいかに豊富なミネラルを含んでいるのかが分かります。
髪の毛が健康に育つためにはミネラルが必要になるため、ミネラルの補給源としてワカメや昆布はとても優秀なのです。とくに亜鉛は、たんぱく質の合成に深い関わりのあるミネラルです。
髪の毛の約8割はたんぱく質で作られていることから、たんぱく質の合成が滞ると髪の毛の健康にも影響が出てしまうと考えられます。
フコイダンに育毛効果があると言われているから
ワカメや昆布のぬめり成分として知られているフコイダンには、育毛効果があると言われています。ある研究によると、フコイダンが毛乳頭を刺激して、毛母細胞を増殖させる効果が明らかになっているそうです。
毛乳頭は髪の毛を成長させる指示を出すところ、毛母細胞は細胞分裂を繰り返すことで髪の毛を伸ばすところなので、フコイダンによって髪の毛が育ちやすくなると言えるでしょう。
ワカメや昆布の色・形が髪の毛と似ているから
ワカメや昆布が海に揺られてなびいている様子と、髪の毛がゆらゆらと揺れる様子が似ていることから、ワカメや昆布が髪の毛に良いと言われるようになった、という説もあります。
昔から同物同治といって、肝臓が悪いなら肝臓を、心臓が悪いときは心臓を食べると良いと言われているのを聞いたことがないでしょうか。これと同じで、薄毛が気になるなら髪の毛に姿が似ているものを食べると良いと考えられたのかもしれません。
ワカメや昆布で薄毛が改善されるのは迷信
いかにもワカメや昆布が薄毛に良いようなイメージがありますが、実は迷信でしかありません。フコイダンが毛乳頭を刺激して毛母細胞を増殖させる研究はあるものの、試験管レベルではなく人間でも効果があったのかについては不明です。
薄毛を改善できるほどの毛母細胞が増殖するのかについても、まだわかりません。そのためワカメや昆布を食べると薄毛に良いという話は、迷信だと言えます。
ワカメが嫌いであまり食べてこなかった方が薄毛になったのは、単なる偶然としか言えません。もし本当にワカメや昆布で本当に薄毛が改善されるのなら、これらを使った発毛剤がいくつか販売されていてもおかしくないものです。
薬局やドラッグストア、そしてクリニックを見渡してもワカメや昆布を使った発毛剤がないことからも、薄毛に良いというのは迷信だと考えられます。
薄毛の原因は食生活ではなく男性ホルモン
薄毛になる原因を詳しく見てみると、ワカメや昆布が薄毛に効かない理由がさらに良くわかります。男性が薄毛になる理由のほとんどはAGA(男性型脱毛症)です。AGAは男性ホルモンの影響で進行することが分かっています。
ジヒドロテストステロンが薄毛を進行させる
男性ホルモンのうち、ジヒドロテストステロン(DHT)がAGAを進行させる原因です。ジヒドロテストステロンは髪の毛の成長を妨げるはたらきがあるため、健康な髪の毛が育ちづらくなります。
これは毛周期のサイクルが乱れてしまうからです。髪の毛は、太く長く育っていく成長期、成長を止めて抜ける準備をする退行期、抜けていく休止期の3つのサイクルを回っています。このサイクルが毛周期です。
健康な方では成長期の期間が十分にあるのですが、AGAを発症している方は、極端に成長期が短くなっています。そのため中途半端にしか育っていない髪の毛が増えて、その分ボリュームが減ってしまうのです。
ジヒドロテストステロンの作られやすさや、髪の毛へのはたらきやすさは生まれつき決まっている部分も多いため、ワカメや昆布を食べたくらいでは何も変わりません。
亜鉛や栄養不足で薄毛になることもある
薄毛の原因はほとんどがジヒドロテストステロンのはたらきによるものです。しかしまれに、亜鉛不足や極端な栄養失調でも薄毛になることがあります。
15歳から69歳までの男性は1日に12mgの亜鉛を摂ることが推奨されていますが、実際には約9mgしか摂れていません。これくらいの不足量でしたら大きな問題があるとは考えにくいです。しかし極端に不足した状態が続くと亜鉛欠乏症となり、抜け毛が増えてしまうことが分かっています。
抜け毛の他に皮膚炎や口内炎、食欲低下や味覚障害なども起こりやすくなるため、これらの症状が出たら亜鉛欠乏症の可能性も疑ってみましょう。
また栄養失調状態が続くことでも薄毛になる可能性があります。髪の毛の成長に必要な栄養素が長期間にわたって不足することで、一時的に抜け毛が増えてしまうのです。このようにジヒドロテストステロン以外のことが原因で薄毛になることもあります。亜鉛不足や栄養不足など思い当たることがあれば、まずはそこから改善していくことも大切です。
薄毛の改善をしたいならクリニックで治療しよう
薄毛に◯◯が効くと言われるものの中には、ワカメや昆布のようにほとんど効果がないものも多くあります。効かないものを使ってもお金と時間がムダになってしまうので、しっかりと薄毛を治療してボリュームを増やしたいのなら、クリニックでの治療を始めましょう。
飲み薬を使う
フィナステリド(プロペシア)やデュタステリド(ザガーロ)などの飲み薬は、AGAの治療に良く用いられます。ジヒドロテストステロンの生成を阻害するはたらきによって、AGAの進行を抑制してくれるのです。
塗り薬を使う
髪の毛を生やす発毛剤は、使い続けることで毛量アップが期待できます。発毛剤として認められているのは、現在ミノキシジルのみです。ミノキシジルは乱れた毛周期を元に戻すことで、髪の毛が正常に成長しやすい状態に整えます。
HARG療法
髪の毛に必要な成長因子を頭皮に直接注入する治療方法です。成長因子が毛母細胞などを刺激してくれるので、髪の毛の成長が促されます。
まとめ
ワカメや昆布は昔から薄毛に良いと言われていますが、明確な根拠はありません。そのため迷信であると言えます。フコイダンが薄毛治療に良い可能性があることは事実ですが、実際に薄毛を改善できるほどの効果が人の体では認められていません。
薄毛を改善するためには迷信に頼らず、飲み薬や塗り薬など効き目が認められている方法で治療を始めましょう。AGAの治療は早く始めれば始めるほど効果が出やすいため、なるべく早めの治療をおすすめします。