薄毛を解消するなら、肩こりから改善しようと言われることがあります。薄毛と肩こりは一見すると関係ないように思えますが、なぜ肩こりが薄毛の原因になると言われているのでしょうか。ここでは薄毛と肩こりの関係性、そして薄毛を改善する主な治療方法をご紹介します。
肩こりが薄毛の原因になると言われている理由
「肩がこっている人は薄毛になりやすい」という言葉を聞いたことがありませんか?毛穴の詰まりや頭皮の血行不良などが薄毛の原因になるとは良く言われますが、肩こりも薄毛に関係しているという俗説があります。
肩こりは血行が悪い証拠
肩がこる原因には、血行不良が関係しています。約5kgもある人間の頭を常に支えている肩は、そもそもこりやすい部位です。筋肉に疲労が蓄積すると、筋肉が硬くなって血管を圧迫します。すると血行が悪くなり、余計に肩こりは悪化していくことが特徴です。
このように肩こりが起こっているということは、血行が悪い証拠だと言えます。
薄毛は血行不良によって起こる
薄毛になる原因としては、さまざまなものが考えられています。もっとも大きく関係しているのは男性ホルモンですが、血行不良も原因の1つとして考えられています。
肩がこる=筋肉が固くなって血行が悪くなっていると取れるため、肩こりも薄毛の原因になると言われているのです。
ただし生え際や頭頂部以外の薄毛は、血行不良が原因ではない可能性があります。たとえば髪の毛が円形状にところどころ抜け落ちる場合は、円形脱毛症が考えられます。円形脱毛症はストレスにより起こると言われていましたが、近頃では自己免疫によるものが大きいと言われていることが特徴です。
まだらに抜けるのではなく、生え際や頭頂部から薄くなってくる場合は、血行不良になっている可能性を考えても良いでしょう。
肩こりは薄毛と関係ない
肩がこると血行が悪い証拠だから、薄毛になりやすい。もっともな意見に聞こえますが、実は肩こりと薄毛には関係がありません。肩がこると薄毛になることに対して、科学的根拠がないのです。
肩がこっても頭皮に影響するほど血行は悪くならない
肩がこると血行が悪くなるのは事実です。しかし肩がこったくらいで頭皮の血行が悪くなるとは考えられません。血行が悪くなるといっても少し悪くなる程度で、詰まったりするわけではないのです。
また仮に肩の血行が悪くなったとしても、頭部には問題なく血液が流れています。というのも、総頸動脈といって太い血管が大動脈から伸びてつながっているのです。頭皮につながっている血管は、何も肩だけに存在しているわけではありません。
そのため肩こりによる血行不良が薄毛の原因になるとは考えにくいのです。万が一、総頸動脈まで血行が悪くなったら、薄毛どころの騒ぎでは済まず命の危険性すらあります。
むしろ血行が悪いから肩がこる
筋肉が固くなることで血行が悪くなり肩こりを起こすケースもありますが、逆に血行不良が原因で肩こりを起こすこともあります。女性だとホルモンバランスの変化によって血行が悪くなり、生理前になると肩こりしやすくなる方もいるものです。
また体が冷えると肩がこりやすいのも、血行の悪さが原因となります。鶏が先か卵が先かという話にはなってしまいますが、肩こりが原因で血行不良になるとは一概には言えません。
薄毛になる原因
肩こりが原因で薄毛になることは、まずありえないことです。頭皮マッサージをすると血行が良くなって薄毛の対策になると言われることもありますが、血行を良くするだけで目に見えてわかるほど薄毛が改善することはないでしょう。それくらい血行の良し悪しは誤差に過ぎません。血行よりも薄毛に大きく関係しているのは、男性ホルモンのはたらきです。
男性ホルモン
男性が薄毛になる原因のほとんどは、男性ホルモンによるものです。男性ホルモンのうちジヒドロテストステロン(DHT)が薄毛に関係しています。正常な方であれば毛周期は正常なサイクルで回っています。しかしジヒドロテストステロンの影響を受けてしまうと、毛周期のうち髪の毛が太く長く育つ成長期の期間が短くなってしまうのです。
髪の毛が抜ける準備をする退行期や、実際に抜けていく休止期へとすぐに移行してしまうため、髪の毛が十分に育ちません。すると、まだ細くて短い状態なのに髪の毛が成長を止めてしまうので、どんどんボリュームが減っていってしまうのです。このようにジヒドロテストステロンの影響で薄毛になる状態をAGA(男性型脱毛症)といいます。
ストレス
男性が薄毛になる原因は、ほとんどがAGAによるものだと思っていただいて構いません。しかしその他にも薄毛になると言われていることがいくつかあるのでご紹介します。
1つはストレスです。ストレスがかかる生活を続けていると、自律神経のはたらきが乱れて血管が収縮しやすい状態になります。血管が収縮すると、髪の毛の成長に必要な栄養素が行き渡りづらくなるため、薄毛になりやすくなると考えられます。ただし、ストレスと薄毛は直接の関係はありません。
栄養バランスの乱れ
極端に栄養が不足した状態が続くと、抜け毛が増えてしまうことがあるものです。髪の毛の成長に必要な栄養素がたりず、十分に育たなくなることで起こります。また亜鉛、鉄分が不足することで薄毛になるこ場合もあるので注意しないといけません。
亜鉛欠乏症といって亜鉛の血中濃度が80μg/dL~130μg/dLを下回ると、脱毛が起こることが分かっています。少し不足したくらいでは欠乏症になりませんが、長いこと血中濃度が低い状態が続くと起きてしまう疾患です。
亜鉛欠乏症の場合は他に皮膚炎や口内炎、性機能不全なども起こりやすいので、これらの症状が出ていないかも確認しましょう。
薄毛の治療をしっかりしたいならクリニックを受診
肩こりを改善したくらいでは、薄毛を治すことはできません。きちんと改善してふさふさの状態に戻したいと思うのであれば、クリニックで治療を受けることが大切です。
飲み薬を使う
飲み薬はAGAの治療をする上で、基本ともなる治療方法です。フィナステリド(プロペシア)やデュタステリド(ザガーロ)がよく使われています。
ジヒドロテストステロンを作るはたらきをもつ5αリダクターゼ(5α還元酵素)を阻害することで、ジヒドロテストステロンを作りにくくするお薬です。AGAの進行を食い止めるお薬とも言えるでしょう。飲み始めてから6か月くらい経つと、毛量の変化を実感できます。
塗り薬を使う
ミノキシジルは、日本で唯一、発毛効果が認められている成分です。乱れた毛周期を正常に戻すことで薄毛を改善します。ミノキシジルもすぐには効果が出ず、少なくとも4か月は続けて使わなければいけません。しかし使い続けることで、髪の毛の太さや密度を改善できることが特徴です。
HARG療法を行う
髪の毛に必要な成長因子を頭皮に直接注入する治療です。細胞にはたらきかけて活性化するため、飲み薬や塗り薬で思うような効果が出なかった方でも効果が期待できます。成長因子の注入は何度か行う必要があり、多くの方は3~4回目の治療で発毛が確認できることが特徴です。
まとめ
肩こりが起こっている状態は、肩周りの血行が悪くなっている証拠です。しかし肩こりがあるからといって、頭皮の血流まで悪くなるとは考えられません。また肩こりが薄毛に関係しているという科学的な根拠もまだない状態です。そのため肩こりが薄毛の原因になることは考えにくいと言えます。
薄毛をきちんと治療したいなら、塗り薬や飲み薬などを使った治療が一番です。医薬品での治療は発毛効果が認められているため、本気で薄毛を改善したい方はクリニックを受診して自分に合う治療をまずは始めてみてください。